陶芸のすすめ

萩焼

萩焼も、その独特の風合いで長く愛されている陶芸品のひとつです。特にわびさびを重んじる茶の湯の世界では、萩焼のもつ素朴な風合いと温かさ、手になじむ感じなどが古くから評価されており、茶人たちが好んで使ってきました。
萩焼の表面にはよく見ると多くのひびが入っており、それが萩焼の特徴を表しています。萩焼はそもそも非常に土を柔らかく焼き上げる焼き物で、かっちりと焼 き締めるというよりは、ふんわり焼き上げるといった焼成を行います。さらに、焼成前にかける釉薬は、焼いた時の収縮率が土とは異なるため、焼き上がるとひ びが入っているのです。はじめはよく見るとひびが入っている程度ですが、お茶などを入れて使ううちにそのひびからお茶などが染み込んで、次第にひびに色が ついていきます。これこそが萩焼の魅力であり「萩の七化け」と呼ばれる変化なのです。萩焼は、窯から出して完成ではなく、それを使って味のある色に変えて くことという独特の性格を持っています。これはひびが入っているだけではなく、そもそもの土の柔らかさにもよるもので、柔らかく焼き上げた土は非常に高い 吸水性があります。使い始めなどは、お茶を飲み終わったころには茶卓に水分がたまっていることもありますので、知らない人は驚くかもしれませんね。しか し、使い続けて器がお茶になじむにつれてそうした漏れはなくなりますので心配は不要。そうして使う人が育てていくというのが萩焼の魅力なのです。
萩焼は、山口県の萩市を中心に作られている焼き物で、現在でも山口県に行くと多くの萩焼の製品を見ることができます。萩焼の焼成は低温度で長時間かけて行 わるのが特徴で、本焼きに100時間、取り出すのに1週間もかかるなど、その素朴な外観からは感じられないほど非常に手間がかかった焼き物です。手間と時 間をかけて、自然な風合いの素朴な作品を作るというのが、日本人の謙虚な精神に合っているのかもしれませんね。400年前に朝鮮から伝来した技術を、日本 の技術が融合して生まれた萩焼は、いまでも広く愛されています。

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